【福島民友新聞】福島県内、新型コロナ確認ゼロ1カ月 専門家「安心はまだ」
2020.6.8
福島県は7日、県内で新型コロナウイルスのPCR検査が20件行われ、新たな感染は確認されなかったと発表した。本県ではこれまで81人の感染が確認されているが、30日連続で「感染確認ゼロ」となった。81人目の陽性確認から8日で1カ月。ただ、専門家は「いつまでも感染確認ゼロが続くわけではない。まだ本当の意味での安心はできない」と警鐘を鳴らす。
職員5人が感染するクラスター(感染者集団)に発展した本宮市の保健福祉施設「えぽか」。子どもの遊び場「子育てサロン」では7日、親子連れが遊び終わるごとに、職員が施設内の遊具やおもちゃを約30分かけて消毒していた。再開以降、換気や人数制限など、徹底した感染予防対策が続く。県内ではえぽかに加え、二本松郵便局(二本松市)、エーピーアイコーポレーションいわき工場(いわき市)、原町サイン(南相馬市)の計4カ所でクラスターが発生。いずれも職場での発生で、クラスターから家庭内感染に拡大した事例も多い。
県内感染者81人を年代別に見ると、50代が約3割に当たる24人で最多だが、10歳未満~90代まで幅広い年代で発生している。県のアドバイザーを務める福島医大の金光敬二教授(感染制御学)は「感染しやすい年代や性別があるわけではなく、職場や家庭で感染が広まりやすい」と指摘する。
◆経路不明、記憶に限界
県によると、クラスターや家族内感染などは感染経路を追跡しやすい一方、81人のうち25人は感染者との接触履歴が明らかでなく、感染経路が不明だ。県は「風邪やインフルエンザでもいつ感染したか分からないことが多く、個人の記憶には限界もある。感染経路の把握の有無にかかわらず、感染者を囲い込み、それ以上の感染拡大を防ぐことが重要だ」とする。
一方、感染防止対策については、緊急事態宣言の延長を受けて当初5月6日までとしていた事業者への休業要請を延長。同15日には解除したが、内堀雅雄知事は「安全宣言ではない」と強調、政府の専門家会議が提唱する「新しい生活様式」の実践と定着を県民に求めてきた。結果として同9日以降、県内で新たな陽性患者は確認されておらず、戸田光昭県保健福祉部長は「一人一人が3密を避けたり、手洗いを徹底したりといったことが全国的に行われた成果」と分析する。
◆第2波、第3波へ備え
「感染確認ゼロ」が1カ月続いたとはいえ7日現在、県内感染者のうち60代男性3人が入院中。中には4月中旬から入院治療を続けている感染者もおり、治療法が確立されていない新型コロナとの闘いの厳しさを物語る。また北九州市の状況を踏まえれば第2波、第3波への備えは不可欠だ。
「いつまでも新たな患者がゼロという保証はない」と金光氏。「今は窓で換気できるが、冬なら風邪をひく。冬場の感染対策も考える必要がある」と感染症対策の長期化を見据える。県も長期化を前提に、医療提供体制の整備へさまざまな施策を講じる一方、戸田部長は県民にこう呼び掛けた。「一人一人が意識して感染防止対策を取ることが自分や家族を守り、医療機関の負担を減らすことにつながる」