【福島民報】【新型コロナ 特別定額給付金】使い道、考えてみよう
2020.6.9
新型コロナウイルス感染症対策として国が国民一人当たり十万円を配る特別定額給付金が申請者の手元に届き始めた。福島市の場合、六月八日までに十一万三千九百七十六件の受け付けに対し振り込み済みは六万五千七百九十一件で、給付率は57・7%となった。小規模な自治体ではもっと高い割合だろう。さてその使い道だ。もし必要で火急な支出に迫られていないなら、コロナに悩む今の世の中だからこその使途について考えててみてはどうか。
給付金の使い道についてはさまざまなアンケート調査が行われている。ブランド総合研究所などが約一万九千人から回答を得た調査(複数回答)で、最も多かったのは「食費などの生活費」で49・4%だった。「貯金、預金」の24・7%が二番目で、「マスクや消毒などの感染予防のための費用」(24・2%)、「家賃や公共料金の支払い」(16・3%)、「感染拡大が収まった後の外食やショッピング」(14・3%)と続く。
他の調査でも上位は「生活費」「税金」「ローン返済」。多くの国民が経済活動を活発化させる方向より、当面の生活維持に回そうとしていることがうかがえる。目の前の現実がある。当然だろう。
四月の家計調査で一世帯当たりの消費支出は前年同月比11・1%減と、平成十三(二〇〇一)年以降最大だった。四月の景気動向指数もリーマン・ショック直後を超える下げ幅となった。県内民間企業の夏のボーナスも大幅減だ。影響のない業種はない。
一方で報道されるのは大学生、在日外国人、さらに弱い立場の人々の困窮だ。学生団体の調査によれば、親の収入減などで、二割を超える大学生が退学を検討している。
特別給付金の支給対象は、限られた収入減少世帯から全国民に拡大された流れを考えれば、受け取った側からその流れを変えることもできる。
県内のいくつかの大学は学生支援の寄付の受け入れ窓口を設けている。IT大手のヤフーなどは医療、教育、文化芸術、飲食などの中小企業の四分野に寄付できる特設サイトを開設した。困窮度が増す在日外国人支援のために設けられた基金の窓口もある。
日本には寄付の文化が乏しいとされるが、東日本大震災などを機に変わりつつある。小額でも多くの人が動けば、社会の新しい流れになる。
給付金の振り込みは世帯ごとだが支給対象は個人だ。応援したい身近な店や地域の産業もあるはずだ。使い道について親子で話し合ってはいかがだろう。(佐久間 順)