【福島民報】保証付き融資福島県内急増 新型コロナの影響を受け企業経営悪化、長期化も
2020.6.9
新型コロナウイルス感染拡大を受け、県信用保証協会の保証付き融資の利用が急増している。五月の保証承諾数は二千九百九十六件となり、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生直後の月別の最多承諾数を百件超上回った。協会は、ほぼ全ての業種で企業の経営状況が悪化しており、経済活動の低迷は長期化すると分析している。経済関係団体からは国や県による継続的な支援を求める声が上がっている。
■震災直後上回る
県信用保証協会によると、国の緊急経済対策の一環で県が五月一日に無利子・無担保の融資制度を設けたのに伴い、中小企業からの申し込みが集中している。五月の保証承諾額は五百四十四億五千八百万円で、前年同月の約八・八倍となった。四月と合わせた二カ月分の承諾額は六百九十億九千四百万円で、前年度累計の六割を超えた。震災と原発事故発生直後は半年以上にわたり保証承諾が月千~二千件台で推移し、最多の二〇一一(平成二十三)年六月は二千八百八十四件だった。
新型コロナウイルス感染拡大により保証を申し込んだ企業の業種は飲食や宿泊、製造、小売り、卸売りなど多岐にわたる。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の寸断、消費者の需要の変化などの影響を受けるとともに、感染拡大の第二波も懸念される。県内企業の経営環境は深刻さを増しており、財務基盤の立て直しが喫緊の課題となっている。
協会は審査の迅速化に向け担当職員を約二十人増員し、五十人体制で作業に当たっている。申請時に提出する事業計画に関する書類などの簡素化も図った。協会の担当者は「感染拡大の影響は甚大で、今後も長期にわたり続く可能性がある。速やかな審査を通じて企業活動を後押ししたい」と話した。
経済活動の本格化が見通せない中、県内の経済関係団体には今後の事業計画の構築に悩む企業などから相談が寄せられている。県商工会連合会は「個別の企業の資金繰りと地域経済の活性化の両面において、国や県の中長期的な支援が不可欠だ」と訴える。
県は無利子・無担保の融資制度をはじめ、休業要請に応じた事業者への協力金支給、県独自のプレミアム付き商品券発行などで県内経済の下支えに力を注ぐ。県経営金融課は「地域の実情に見合った対策が必要。国に継続的な財源確保を求めたい」としている。
※信用保証制度
企業が金融機関から融資を受ける際に、各都道府県などにある信用保証協会が保証人となって資金調達を支援する仕組み。保証承諾額は金融機関による企業への融資額に相当する。企業が借金を返済できなくなった場合、保証協会が債務を肩代わり(代位弁済)する。企業は債権者となった信用保証協会に対し、借入金を返済(弁済)する必要がある。